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【後縦靭帯骨化症とは?】
脊椎を構成する椎体の後縁を連結し、脊柱のほぼ全てを縦走する後縦靱帯が硬く骨化してしまい脊椎管狭窄症を発症し、脊髄、もしくは神経根の圧迫障害が現れる疾患です。
頸椎に最も多く、胸椎や腰椎にも発症することがあります。
後縦靱帯骨化症の症状がある方は、前縦靱帯の骨化が中心となり、広範囲に脊柱靱帯骨化を来たしてしまいます。
強直性脊椎骨増殖症を約40%ほど合併し、黄色靱帯の骨化や棘上靱帯自体の骨化を合併することが多く、脊椎靱帯骨化一部分症としての考え方もあります。
厚生労働省指定の難病性疾患(特定疾患)の1つであり、発生頻度は男性で約4%、女性で約2%であり、男性が女性の2倍の確率で発症します。
日本を含めた東南アジアの諸国に比較的発生頻度が高いとされ、人種により差があるといわれています。
【症状】
頚椎にこの病気が起こった場合、最初に出てくる症状としては、首、肩甲骨周辺・指先の痛み、痺れがあります。
症状が進行すると、次第に痛み、痺れの範囲が広がり、
・足の痺れ
・感覚障害
・足が動かしにくいなどの運動障害
・両手での細かい作業が困難となる(巧緻運動障害)が発症します。
重症化すると、立ったり歩いたりすること自体が困難となり、排尿や排便の障害が出現したりと日常生活が困難となることもあります。
また、胸椎にこの病気が起こると、体幹や下半身に症状が出てきます。
初発症状として、下肢の脱力、痺れが発症してきます。
重症化すると、歩行困難・排尿・排便の障害等が発症することがあります。
さらに、腰椎にこの病気が起こると、歩行時の下肢の痛み・痺れ・脱力等が発症します。
全ての方が、病状が悪化するわけではありません。半分以上の方は数年経過したとしても、症状が変化することはありません。
しかし、一部の方は次第に神経障害が悪化し、進行性の場合、手術をすることもあります。
また、軽い外傷、転倒などで、急に手や足が動かしづらくなったり、今までの症状が強くなったりすることもあります。
【原因】
多くの説がありますが、現在のところ不明です。単一の原因で生じる病気ではなく、様々な要因が関与し、発病するとされています。
この病気に関係するものは、遺伝的素因、性ホルモン異常、カルシウム・ビタミンDによる代謝異常、糖尿病や肥満傾向、老化現象、全身的な骨化傾向、骨化部位の局所的なストレス、またはその部位の椎間板突出など様々な要因が考えられています。ですが、原因の特定には至りません。
家族内からの発症が多いことから、遺伝的な関連が有力とされていましたが、
「最先端の遺伝子解析の手法により、遺伝子候補として第6染色体短腕上の HLA 領域にある XI 型コラゲン α2遺伝子」が挙げられています。
〈参考文献〉標準整形外科学 第10版 P.447
【病院での診断・治療】
整形外科での神経学的診察が必要になります。
X線検査(レントゲン)も行いますが初期段階では骨化がはっきりと写らないこともあるため、その場合はCT検査を行います。
その他にもMRI検査や脊髄造影検査などを行い神経の圧迫状態をみた上で、予後や治療方針を決定されます。
保存的治療としては、局所の安静を図る為、頸椎に装具(頚椎カラー)を装着し、薬物療法が行われます。
保存療法で効果がない場合、もしくは、脊髄症状が明らかになっている症例には手術療法が行われます。
頸椎に起こる後縦靱帯骨化症では、後方からの椎弓形成術が選択されやすいのですが、骨化が大きくなり、椎弓形成術による脊髄が後方にシフトしている場合は、脊髄の圧迫が取れない症例、脊椎のバランスが不良な症例では、前方の除圧固定が選択されます。
胸椎の後縦靱帯骨化症の外科的な治療としては、高位や骨化の状態に応じ、前方又は後方、または、前方と後方を選択、固定の複合を要することもあります。
特に、後弯部の嘴状の症例は脊髄麻痺のリスクが高いため、脊髄モニタリング、術中エコーの併用も考慮していきます。
【予後】
骨化が脊柱管前後径の60%を超えると、ほぼ全ての例で脊髄障害が出現するが、静的な圧迫より動的な圧迫の要因の方が脊髄症の発症に関与している事がほとんどです。
軽症の場合は、神経症状が出ない場合が多く、必ずしも進行性とはいえません。
一方、進行性の場合は、自然軽快は困難な為、時期を問わず手術を選択することが重要です。
術後、長期予後は術後5年を境に、徐々に神経症状が再悪化する傾向が見られやすいです。
頸椎の改善率は約50%程度で、脊髄麻痺の悪化は約4%、髄節性運動麻痺は約5%から10%程度と報告されています。
一方、胸椎の改善率は頸椎と比較して術後成績が不良で、改善率は約40%で、脊髄麻痺の悪化も約10%程度とされています。
症状一覧
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